超秘境路線の只見線が復旧できる理由と思惑を考える

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2011年の新潟・福島豪雨により大きな被害を受け、只見線は会津川口駅~只見駅間で運転を見合わせていました。

しかし、2022年10月1日に約11年ぶりに全線で運転を再開します。

只見線全線運転再開に合わせて、只見線沿線では様々なイベントが行われる予定です。

そんな盛り上がりを見せている只見線ですが、普段はJR東日本屈指の赤字ローカル線。

なぜそんなローカル線が復旧できたのかということについてみていこうと思います。

只見線の歴史

ここで、只見線の歴史について軽く触れておきます。

只見線は、福島の会津若松駅と新潟の小出駅を結ぶ路線ですが、全線開業には実に約43年もかかっています。

国鉄会津線(会津若松~只見間)

  • 1928年 会津若松 – 会津柳津間開業
  • 1941年 会津柳津 – 会津宮下間開業
  • 1956年 会津宮下 – 会津川口間開業
  • 1963年 会津川口 – 只見間開業

国鉄只見線(小出~大白川間)

  • 1942年 小出 – 大白川間開業
  • 1971年 只見 – 大白川間開業

ちなみに、会津川口 – 只見間は国鉄が線路を敷いたわけではなく、電源開発株式会社がダム建設のために開発した専用線でした。

建設されたダムは田子倉ダムといい、高さ145m、長さ462m、総貯水量は5億トンというビッグダムで有名です。

また、1942年の小出 – 大白川間開業から1971年の全線開通まで、国鉄只見線は只見に至らない只見線だったという面白いことがあったのです。

只見線を取り巻く環境

只見線沿線の自然環境

只見線は会津坂本駅あたりから只見駅あたりまで只見川に並行して走行します。

また、大白川駅から終点小出駅までは破間川と並行して走ります。

また、只見線の沿線には10を超えるダムがあり、非常に険しい山々にレールを通しているということが分かると思います。

その分、山々と青い谷川の美しい景色を眺めることができるのです。

只見線を襲った2つの災害

只見線は超秘境路線かつ絶景路線で有名ですが、ときには自然は我々に牙をむきます。

過去には落石や斜面崩壊による事故、豪雨による被害など、只見線はたびたび運行不能に見舞われていました。

そして2011年3月11日東日本大震災が発生し、さらに7月には福島・新潟豪雨が発生して、会津川口駅 – 会津大塩駅間で只見川第5 – 第7橋梁が流失、また会津坂本駅 – 会津柳津駅間で路盤が流出し、会津坂下駅 – 小出駅間が不通となってしまったのでした。

特に被害の大きかった只見~会津川口間は、2022年の9月30日まで運転を見合わせることになったのです。

只見線の営業収支

ここで少し観点を変えて、只見線の営業収支についてみてみましょう。

区間ごとの1987年度と2021年度それぞれの平均通過人員(人/日)

路線1987年度2021年度
会津若松~小出644218
会津若松~会津坂下1,962978
会津坂下~会津川口533124
会津川口~只見18412
只見~小出36969
只見線は1987年のJR発足時から、すでに会津坂下~小出間で「現在の基準で考えても大赤字」という秘境路線だったようです。
とくに、会津川口~只見~小出は車両1両で事足りてしまうほどの利用者しかいないということです。
只見線の営業係数(円)
区間営業係数(円)収支率(%)
会津若松~会津坂下68814.5
会津坂下~会津川口4,1992.4
只見~小出7,8451.3
2022年7月、JR東日本は初めて線区別の収支を公表しました。
只見線の営業係数はやはり全区間で赤字、
とくに会津坂下~会津川口は100円を稼ぐために4199円、
只見~小出は7845円も費用がかかってしまうほどの赤字であるということです。

なぜ只見線は復旧したのか

では、なぜそんな大赤字ローカル線只見線が復旧できるのでしょうか。

そのキーポイントは、「上下分離方式

上下分離方式とは、線路など路線の運営に必要な設備管理は地方自治体が行い、列車の運行はJRが行うという運営方式です。

実際に青い森鉄道や、JR九州の長崎本線の江北(肥前山口)~諫早間がこの方式で運営されています。

インフラと運行をそれぞれ独立させて運営する上下分離方式ですが、自治体が管理する割合はぞれぞれ異なります。

車両以外の資産をすべて自治体が保有することもあれば、資産は保有せずに、列車を運行する会社に自治体が投資をするのみの場合もあるということです。

只見線の場合は、只見~会津川口間の鉄道施設と土地を保有し、JR東日本に貸して維持管理を行うとのことです。

福島県側の考え

福島県は只見線の復旧・運行維持に大きく関わり、お金がかかることになります。

ではなぜ多額のお金をかけてでも只見線を維持しようと考えているのでしょうか。

実は、只見線の沿線は日本有数の豪雪地帯で、並行する道路は毎年冬季通行止めとなってしまいます。

そうすると、只見線は唯一の交通機関となることも考えられます。

また、福島県は只見線にさまざまな分野でおおきな価値を見出しているようです。

沿線に眠る観光資源や、教育資源を最大限有効活用し、只見線の利用を促進していこうと考えていることが見て取れます。

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/263981.pdf

福島県は、只見線を全線運転再開させることで沿線の魅力をアピールして観光の起爆剤にするとともに、生活路線としても利用者の増加を目指すということを計画しているようです。

そして最終的に沿線の活性化を目指したいという思惑があるようです。

まとめ

以上、只見線の全線運転再開に合わせて、只見線の歴史と復活する理由をご紹介しました。

2022年10月は只見線の沿線でさまざまなイベントが行われます。

10年以上見られなかった列車から見る美しい風景をぜひ楽しんでほしいものです。

そして、誰もが何度も訪たくなるような、日本屈指の観光路線と進化してほしいですね。

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