現在、日本は人口減少の最中にあり、地方の過疎化も進行しています。
そのため、JR北海道は数多くの鉄道路線を廃止してきました。
一方で、東北の鉄道路線の多くはJR東日本や第三セクターによって運行が維持されています。
ただ、東北の多くの路線は赤字で、存廃議論が開始されてもおかしくない路線もあります。
そこで、今回は廃線になりうる東北の鉄道路線を紹介していきます。
花輪線(好摩~大舘)
花輪線は岩手県の好摩駅から秋田県の大舘駅を結ぶ路線です。愛称は「十和田八幡平四季彩ライン」。
大舘駅は奥羽本線への乗換駅、好摩駅はIGR岩手銀河鉄道線への乗換駅です。
定期列車のほとんどはIGR岩手銀河鉄道線に乗り入れて盛岡駅まで直通運転されています。
かつては快速「八幡平」や 急行「よねしろ」が運行されていて、秋田や弘前まで乗り入れていました。
また、上野発の夜行列車も運行されていました。
しかし、沿線の人口減少や並行する東北自動車道を走る高速バスとの競争にて劣勢であるため、年々利用者数は減少しています。
- 花輪線の2020年度の平均通過人員(人/日)…318
- 花輪線の2019年度の平均通過人員(人/日)…357
特に、荒屋新町~鹿角花輪間の2020年度の平均通過人員は60人と非常に少なくなっています。
平成21年には花輪線利用促進協議会が結成され、沿線住民の生活路線の確保及び沿線地域の振興を図る目的で花輪線の利用を促進しています。
協議会は以下の組織で構成されています。
JR花輪線沿線(IGRいわて銀河鉄道区間を含む)の5市(盛岡市・滝沢市・八幡平市・鹿角市・大館市)、岩手県、秋田県、JR東日本盛岡支社のほか、4市町村、IGRいわて銀河鉄道、地元商工団体・観光団体で構成されています。
花輪線に乗ろうよ!~花輪線利用促進協議会ウェブサイト~【花輪線利用促進協議会について】 (hanawasen-ni-norouyo.org)
かつては盛岡と秋田・弘前を結ぶ都市間輸送を担う路線でしたが、現在では完全にローカル輸送に徹しています。
山田線(盛岡~宮古)
山田線は同じく岩手県の盛岡駅から同県の宮古駅を結ぶ路線です。
盛岡駅は東北新幹線・東北本線・田沢湖線・IGR岩手銀河鉄道線との乗換駅、宮古駅は三陸鉄道との乗換駅です。
かつては盛岡駅と釜石駅を結ぶ路線でしたが、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受け、2019年に三陸鉄道に移管されて運転を再開しました。
過去には「急行陸中」(現在の快速はまゆり)や山田線 – 釜石線 – 東北本線を回る盛岡発盛岡行きの循環「急行そとやま」「五葉」が運行されていました。
また、東日本大震災以前には仙台駅 – 八戸駅間に三陸縦貫列車「リアス・シーライナー」が夏季に運行されていました。
ただ、盛岡宮古間は需要がないわけではありません。
山田線と並行して国道106号線では、盛岡駅前~宮古駅前間で「106急行バス」が毎時1本運行されています。
そのため、山田線が不利なのは、以下が原因だと考えられます。
- 山田線は本数が少なく不便であるということ
- 2021年3月28日に宮古盛岡横断道路(自動車専用道路)が開通し、山田線より所要時間が30分程短縮されたこと
そんな山田線ですが、1日の平均通過人員はなんとJR東日本の路線でダントツ最下位です。
- 山田線の2020年度の平均通過人員(人/日)… 95
- 山田線の2019年度の平均通過人員(人/日)…174
ただ、土休日を中心に臨時快速列車「さんりくトレイン宮古」や年末年始には「ふるさと宮古」、宮古市で毎年冬に開催される宮古真鱈まつりのときには「宮古真鱈号」が運行されています。また、途中駅の駅舎が最近新しくなったため、企業内の廃止優先度は高くないのかもしれません。
陸羽西線(新庄~余目)
陸羽西線は山形県の新庄駅から同県の余目駅までを結ぶ路線です。愛称は「奥の細道最上川ライン」。
新庄駅は山形新幹線・奥羽本線・仙山線・左沢線との乗換駅で、余目駅は羽越本線との乗換駅です。
路線は新庄余目間ですが、列車の大半は羽越本線に乗り入れて酒田駅発着となっています。
かつては、仙台と酒田を結ぶ急行「月山」や、仙台・米沢と羽後本荘を結ぶ急行「もがみ」、上野と酒田を結ぶ夜行急行「出羽」が運行されていました。
現在は急行「月山」が快速に格下げされ、快速「最上川」の愛称が与えられました。
上り列車は余目駅 – 新庄駅間で、下りは新庄駅 – 羽越本線酒田駅間で各1本ずつで運行されています。
- 陸羽西線の2020年度の平均通過人員(人/日)… 163
- 陸羽西線の2019年度の平均通過人員(人/日)… 343
そんな陸羽西線ですが、並行して新庄酒田道路(高規格道路)が建設されていて、その工事のために2022年5月14日からおよそ2年間全線で運行休止が予定されています。
この運休期間内はバス代行となりますが、陸羽西線を廃止した場合の試験であるとも考えられます。
また、この道路が完成した時には陸羽西線の利用者がさらに減少するでしょう。
米坂線 (米沢~坂町)
米坂線は山形県の米沢駅から新潟県の坂町駅を結ぶ路線です。米沢駅は山形新幹線・奥羽本線との乗換駅、坂町駅は羽越本線との乗換駅です。
過去には急行「べにばな」が米沢線を経由して新潟~仙台間で運行されていました。(のちに新潟~山形間に短縮)
1991年には急行「べにばな」は新潟~米沢間の快速列車に格下げされ、2007年には快速「べにばな1号」が各駅停車に格下げされたことで、現在の1往復体制が確立しています。
かつては南東北地方の日本海側と内陸を結ぶ重要な路線で、貨物列車も運行されていました。
しかし、自動車の普及と人口減少が原因で連絡的路線の役割の重要性は薄まっていき、羽越本線の電化と山形新幹線の開通で完全に役割を終えました。
- 米坂線の2020年度の平均通過人員(人/日)… 302
- 米坂線の2019年度の平均通過人員(人/日)… 373
現在では米坂線の利用者数はJR発足時(1987年)の4分の1ほどに減少しており、
運行本数も2時間に1本日中は3から4時間間隔での運行となっています。
ただ、沿線には自動車専用の高規格道路はなく、国道が並行しているのみです。また、米沢~新潟・村上間には輸送の需要があると考えられるので、利便性の向上を検討してほしいですね。
北上線(北上~横手)
北上線は岩手県の北上駅から秋田県の横手駅までを結ぶ路線です。
北上駅は東北新幹線・東北本線との乗換駅、横手駅は奥羽本線との乗換駅です。
北上線は東北本線と日本海側を結ぶ路線の中でも線形がよく、DD51などの大型機関車が入線することができたため、東北本線を直通する貨物列車が運行されていました。
また、仙台~秋田の最速ルートであった北上線は、特急「あおば」や急行「きたかみ」が運行されていました。
山形新幹線の工事開始の時期からは上野~秋田間で臨時夜行急行「おが」が運行され、
秋田新幹線の工事の際は特急「秋田リレー号」北上 – 秋田間で東北新幹線・東北本線と接続する形で運転されていました。
さらには、災害や事故発生時には優等列車の迂回路として利用されることも多く、東北本線と日本海側との数少ない連絡路線として使用されています。
過去には、特急「はくつる」や「ゆうづる」・寝台特急「あけぼの」が当線を迂回したことがありました。
- 北上線の2020年度の平均通過人員(人/日)… 219
- 北上線の2019年度の平均通過人員(人/日)… 306
北上線は、並行する秋田自動車道の利用者が増加している影響で年々利用客は減少しています。
ただ、沿線地域には「錦秋湖」や温泉・スキーなどの観光資源はあるので、それらの活用した利用促進を目指してほしいと思います。
まとめ
東北には鉄道路線が現在でも多くが運営されていますが、JR北海道より赤字の路線もあります。
また、ほとんどの路線で、モータリゼーションの影響でを受けて利用者が年々減少しています。
地域の公共交通機関として維持してほしいとは思いますが、路線の存廃議論はいつか生じるでしょう。
記録はお早めに…